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今日子 (フルート・ピッコロ担当)

今日子(きょうこ)

今日子は、フルート担当である。1年の楽器担当選抜をトップで抜けたセンスが良いのが特徴である。もともとピアノをやっていたこともあり、楽譜も読めるし音階も分かる。幸いピアノもフルートも同じC調(ツェー)であるため違和感がない。どうやって息を吹き込むかを意識すればあとはなんとなく音が取れたのである。今日子の問題は、体が細く華奢なこと。フルートは華奢な綺麗な女性のイメージがあるが、実際には吹く息の半分近くの量が音にならず抜けていくような感じで、思いのほか肺活量が必要である。どうしても肺活量が足りなくなるようである。 もともとプライドが高く、何をやらせてもそつなくこなす性格で、早くからフルートのレッスンを受けることとなる。人前で努力をしている処をあまり見せることはないが、陰で努力を重ねるタイプである。しかし、体の成長問題はなかなか解決されるものでもなく、肺活量と舌技のタンギングがどうしても克服できず伸び悩んでいた。それから逃げるわけではないが、2年になり生徒会副会長に立候補して、吹部では実力的に他を征することが出来ていないが、生徒会活動という場を得て、上手くバランスを保っていた。2年から入ってきた、彩の存在は気にかかるようで、今日子とは性格が全く別で徐々に力を出してきた彩をなんとか敵対することなく同調したいと画策するのであった。
 次第に良い音が出るようなると、さらに感情表現を出そうと思い、体をスイングして吹くようになった。しかしながら、まだ完璧にアンブシュアが固まっていない中でのスイングは、口元と口金の位置関係がずれることとなり、意図しない強弱、意図しない音色の変化が起こることとなる。ビブラートに似ているのであるが、体のスイングと同じ周期で揺れるので、他の奏者が同期しにくいこととなる。音でフルートパートを引っ張ろうとするのだが、これで他の奏者は付いてけなくなることが多かった。

 後に、2年で転入した彩の追い上げに戸惑い、感情がうまくコントロールできない時期もあったが、逆に彩と音を合わせる重要性に気づき、結果的に自分自身の「音」の成長を促すことができるようになった。
 自分ひとりで突っ走るのでは無く、周りの音を見分け合わせて、その上でリードするという、吹奏楽の合奏の一番重要なことを学び実践できるように成長していくのである。

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※ この物語は、とある、地方中学校を舞台に繰り広げる、無謀かつ純粋な挑戦の記録です。
※ ストーリー全体はフィクションでありますが、一つ一つのエピソードは実話を基に、アレンジをして書かれています。
※ 登場する実在の学校、団体、個人等と、全く関係・関連はありません。
※ この作品「めざせ!東海大会♪~ある吹奏楽部の挑戦~」は、著作物であり、版権は著者に依存します。無断転載、転用はお断りします。
※ 原作者(著者):ホルン太郎 なお、この作品は、取材で集めた実話をヒントに新たに書きおろしたフィクションです。
※ この作品は、一般市民団体「まちなか演奏会実行委員会」によって公開されています。

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