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超初級 製造工学

楽器の音響工学

 「音」って、なにでしょう?

 音の性質を知れば、楽器の構造が理解できます。吹奏楽は、この「音」を合わせて奏でる「合奏」が基本です。音と響きの基礎を覗いてみましょう。

〇 音って何?

名称
画像
概要
ラッカー仕上げ
ラッカー仕上げなどは、最終工程で塗装します。 鍍金などは、下地処理をして、下鍍金、仕上げ鍍金と何度か厚塗りをする場合があります。真鍮に金鍍金は乗りが悪いので、一旦、ニッケル鍍金や銀鍍金を施してから金鍍金することが多いようです。
磨き上げ
加工工程で、細かな傷や窪みが出来ます。大きな窪みは金属を溶かして埋めます。最後にヤスリで磨いていきます。目の粗い方から順番に細かくして、表面を均一に仕上げます。
ネジ止め
ネジで金属通しを留めます。後で分解できる良さがありますが、可動部分に使うと、ネジが緩んできます。 逆にこの調整ができることを利点として、音色の調整や操作性の調整ができます。
ろう付け
金属を溶かして接着剤にする方法で、接着剤として、融点の低い金属(すずなど)が使われます。ろう付けの一つに、「半田付け」があります。「半田」は、鉛とすずの合金で、柔らかく、融点が低く、電気的特性が優れています。電気製品の導通部分の接合に用いられます。
溶接
金属をつなぎ合わせる技法の一つで、同じ金属の延べ板を溶かして接合部に貼り付ける方法や、つなぎ合わせる金属をぴったしにしてから、両方とも溶かして融合させる方法などがあります。
焼き入れ
金属は、結晶構造が比較的緩いので、柔らかいという特性を持ちます。加工はしやすいが、その後の変形も起こりやすいという事です。そこで、「焼き入れ」という作業をする事で、強度を増すことが出来ます。溶けない程度に高音にすることで、結晶構造が均一になり硬くなります。やり過ぎるともろくなります。
削り出し
鍛造、鋳造で金属の塊が出来たら、表面を削り出して成型する方法です。型による成型だと、表面に型の微妙な凹凸が写っています。ドリル、研磨材等で、均一に毛釣り取り、精度の高い平滑面や、局面を造り出します。
水圧成形
複雑な局面の場合、型を作り、その中にパイプを入れ、両端から超高圧の水を入れます。 水圧で金属が延び、型に張り付き曲線を写し取ります。 昔は、超高速で射出した金属球を中で回転させ、型に貼り合わせたりしました。
射出
溶けた金属に圧力をかけて、穴から引っ張り出します。太いものから、ピアノ線まで、線材にも使われます。 引っ張り出されてからの冷却を調整することで、強度や張りを作ります。 再度焼き入れをすると、バネになります。
ダイキャスト
鍛造に近い方法です。鋳造は金属の重さで型に流し込みますが、アルミのような軽い金属では、細かな凹凸だと表面抵抗が大きく、上手く流し込めません。そのため、金属を流し込んだ後、高圧をかける方法です。高圧をかけるのに、昔は火薬を使いました。
絞り
お椀状の局面を作る技法です。内側は型に当てて、外からローラーの付いた棒で押し当てながら回していきます。徐々に金属が、型に馴染むので、「絞る」と表現されます。新幹線のボンネットのカーブも、アルミ板を絞る手作りです。
たたき出し
型に当てて、金属板を文字通り、叩いて形を作ります。職人技で、高級モデルで使われます。機械では作り得ない、微妙な成型が可能ですが、その分、高額になります。
プレス
金属板を型にはめて、高圧で押し形を成型します。自動化されローコストでスピーディーに成型できますが、細かな形状や仕上がりにばらつきがあります。
鋳造
鍛造に対して、溶けた金属をそのまま型に流し込んで冷やした工法です。ローコストで細かな形状が作れる反面、強度が少なくもろいです。
鍛造
金属は、液体状態よりも固体状態だとわずかに小さくなります。そのため、圧力で鍛える事で、しなりと強度が増します。 素材を溶かしたら、半固形状で高圧でプレスして型に入れ込み、更に高圧をかけて型にします。
〇 音の作用・反作用

 音の力は、行ったり来たりの「振動」だと述べましたが、ある方向を押せば逆向きにも同じ力で反発します。これを「作用・反作用」と言います。小船に乗って石を投げると、わずかに石を投げたと反対に小船がすすみます。理論的には、作用、反作用は同じ力で、摩擦、抵抗等が無ければ、打ち消し合って何も動きません。先ほどの小船の場合、船の重さを重くするとか、船を岸壁に固定すると、石はより早く遠くに飛んで行くようになります。

 先ほどのスピーカーの場合、パーツ屋さんで売っている部品としてのスピーカーに、音の信号を流しても、小さく高音で「シャカシャカ」としか聞こえません。しかし、そのスピーカーを、エンクロージャーと呼ばれるスピーカー取り付け用の箱に固定すると、「ドレミファソ♪」と、音が聞こえてきます。

 従って、音を造り出すには、極力反作用を小さくして、作用である「音」を引き出さなければなりません。

 では、どうやって、反作用を減らすのか。

 音は振動であり、エネルギーです。エネルギーは、「質量保存の法則」が働いています。つまり「質量」=「重さ」ですね。スピーカーで言うところの音の振動の発生源、コアと呼ばれる磁石よりも、遙かに重たい物質で、スピーカーユニットを固定すれば、質量の軽いコアにエネルギーが集中します。
高級オーディオシステムのスピーカーが何で大きく重いか、ここのその原理があるのです。

 

〇 響きって何?

 音には、振動と呼ばれる性質と、空気の流れと呼ばれる性質があり、それぞれ異なる特徴を持っています。逆に言えば、空気の無い世界は「音」がありません。振動と流れの異なる二つの性質が「音」を造り出しています。

 

 振動波として出た音は、壁にぶつかると反射します。理論的には、進入角と同等の角度で反射します。
それとは別に、壁にぶつかると、壁を突き抜けて壁の反対側に抜けていく音もあります。

 

 音は、壁に沿って伝わる癖があります。蛇腹構造の場合、壁に沿うように伝わっていきます。音は、距離が遠くなるほど小さくなります。距離が2倍で減衰音圧は6dBといわれています。音源から100m離れていれば、40dB小さくなっていると言うことです。では上記のような蛇腹構造の防音壁を設ければ、仮に角度60度で設置すれば、音源から50mで、ー40dBとなります。防音室の壁や、コンサートホールの壁に凹凸があるのは、このような効果を狙っています。

 

 反射と管壁を伝わる性質を掛け合わせて、管体に音を流すと、完全な円柱形状だと、音の進行方向が整い、音の伝わる方向(指向性)が強くなります。トロンボーンがその代表例です。
 それに対し、円錐形にすると、末広がりに音が拡散して、音がいろいろな方向に飛ぶようになります。メガホンがその代表例で、管楽器のベル部分や、サクソフォンなどがそれに当たります。

 さらに、壁の構造体に吸収されてしまう音があります。
もう一つ、壁に伝えわりながら空気の振動よりも早く音が伝わるという現象もあります。

 ホールで音を出すと、これらが全て関与して、楽器のベルの先から出た音以外に、いろいろなところで反射したり、早く伝わったり、逆に残響音として遅く伝わったりしたいろいろな「音」が共振した状態で、耳に入ってきます。このいろいろな成分を総称して「響き」と呼びます。

 演奏を録音する技術者に聞くと、金管楽器と木管楽器と、マイクを向ける方法が違うそうです。

 マイクはどちらも2本が良いそうで、一つは、指向性マイクをベルの開口部に向けて設置して、もう一つは、無指向性マイクを楽器全体に向けるそうです。ここはほぼ同じですが、録音する際のミキシングする際、入力バランスが異なります。
 金管楽器(トランペットなど)は、ベル側を8、管体を2ぐらいにするそうです。
 木管楽器(クラリネットなど)は、ベル側を3、管体を7ぐらいにするそうです。
それは、金管は音の成分のほとんどがベルからでいるのに対し、木管は、管体全体が響いて出ているからだそうです。

 なるほど、トランペット、トロンボーンは、ステージ後方の台の上から、お客さんにベルを向けて演奏していますが、クラリネットやオーボエはそもそもベルが下を向いていて、演奏者自体が横向いたりしていますよね。

 低音域楽器は、音の指向性が弱いので、ベルが上を向いていることが多いですね。ユーフォニアム、チューバ、ファゴットなど。一般に、音が高いと、音の指向性が高く、低いと指向性が弱くなると言われます。周波数が高いと直線的に伝わり、周波数が低いと広がるように伝わるという事です。
 光の世界で言えば、周波数の高い紫外線は、直射日光でまっすぐ飛んできます。逆に言えば、直射日光を避けるとかなり低減しますね。でも、周波数の低い赤外線は、輻射熱といって、ビルや地面に反射したりして、暖かくします。
 音も同様な性質を持っていて、高音は方向性を持っています。ベルの向きが重要となりますが、低音は指向性が弱くベルの方向はあまり気にしません。内部反射の多い金管楽器は指向性が高く、管全体を響かせる木管楽器は指向性が弱い。この性質と合わせると、ともに指向性の強い金管で高音のトランペットは、ベルの方向で、音の強弱が変わります。逆に、指向性の弱い木管と低音の組み合わせでは、ファゴット(バズーン)は、ベルは上方向(どちらかと言えば斜め)を向いています。

 フルート、ピッコロは、エアリードと呼ばれ、口金部分で音を作っています。つまり「音」の成分は、管の端の穴から出てくるのではなく、口金部分で発生し、管内で反響して口金部分から拡散しています。そのため、奏者の口元が見える方向に「音」は飛んで行きます。そのため、聴者に対して楽器を真横に持つことが、一番綺麗に音が伝わるとされています。
 つまり、クラリネットやオーボエは、リードが発生した振動を、吐く息に載せてベルから排出されます。ただ穴が空いていれば、そこからも息は出るため、完全体から音が発生しています。それに対して、フルートは、吐く息に載せた振動は、そのままほとんど楽器の外に吐き出されます。その吐き出された息の振動に、管内で共鳴した「響き」成分が共振して、大きく響いて聞こえるのです。したがって、「音」の主成分は、管内を通らず、直接外に放出されているのです。この構造からすれば、「管楽器」と少し違いますね。
 音の主成分が管の長さによって造り出されている、クラリネットやオーボエと違い、フルートは、あくまで、共鳴する空間の長さを変えることで、音の主成分と共振する周波数を造りだしています。バイオリンの本体の空間を大きくしたり小さくしたり出来たら、音が高くなったり、小さくなったりするでしょう。小さいほうからバイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス。もし本体の大きさを自由に変えられれば、ひとつの「楽器」となったでしょう。弦楽器が指向性が低いのと、フルートと同じ原理ですね。

〇 紙の筒の管楽器

テナーサックスのマウスピースに、チラシを丸めて突っ込んでみました。

丸く柔らかい「音」が出ました。

この筒の長さを変えたり、穴を開けて、指で開閉したりすれば、「音階」が作れますね。
 

〇 素材の硬さ、重さ

 ホールでの音の響き方は、また別の機会として、まず、楽器の音を最大限外に出すということが、楽器の一番大切な部分ですよね。どんなに素晴らしいアンブシュアで良い音を作りだしても、それがホールなどに出て行かなければ、聴く人の耳に伝わりません。(逆に、住宅街でいかに練習している音を外に出さないかという事の裏返しになります)

 1) 振動成分をくまなく「音」として出す。
 2) むやみに振動を吸収させない。
 3) むやみに振動を反射させて余分な共振を起こさせない。
 4) 上記と反するが、美しい音色に仕上げる。
 と、言った具合に、楽器に要求される「音」の設計のポイントです。

 1) 振動成分をロス無く伝えると言うことで、管体が発明されました。管内で共振させることで、振動が増幅され、大きな音となって管から外へ出てきます。
 2) 振動を吸収させないという意味では、硬い素材が良いです。柔らかい素材は、素材自体が振動してしまい、音を打ち消してしまいます。
 3) むやみに反射させないという点では、重たい素材が良いですね。質量保存の法則です。
 4) 美しい音色は、耳に心地の良い音、という意味です。高音域は、金属素材だと強く伝わりすぎるので、木製の場合が多いですね。低音域は、音の方向性(指向性)が弱くなるため、大きな楽器とすると、大きく響く楽器となります。

 

〇 管の長さ

 そもそも、「音」は、周波数(振動)成分がメインです。この「振動」は、管の長さで決まります。管が長ければ「低い音」、管が短ければ「高い音」となります。管が長いと持ち運びが不便で、演奏の邪魔にもなります。そこで、適度にくるくる曲げます。この曲がる角度がきついと、内部抵抗が大きくなり、吹くときに力が要ります。ゆったりと曲げていると、音も柔らかになります。ホルンが、丸い円形をしているはそのためです。

 アイーダ・トランペットと呼ばれる、ファンファーレ用のトランペットは、ベルの管に旗を掲げたりするため、管がストレートです。音はまっすぐ遠くに届くので、長い行進などの最後尾まで音を届けられます。また、広い城内に音を届けられます。逆に、演奏者は自分の音がよく分からないそうです。狭いホールだと、反射してくる自分の音を認識できるのですが、広いスタジアムなので演奏すると、自分の音が聞こえにくいと言います。音の指向性が高いとそういう弊害もありますね。

 オペラ「アイーダ」で、戦いに勝っ凱旋する兵の列を迎える「凱旋行進曲」の演奏に使われるので、その名がつきました。
 サッカーの応援で有名なフレーズですね。

〇 管の太さ

 管の口径が小さいと、吹くときに、直進する力に対して、内部抵抗が高いため、吹きにくくなります。細いストローと、太めのストローでは、細いストローの方が、力が要りますよね。管の太さは、この管壁との共振を高める為に利用されます。細ければ反響する長さが短いので、高い音が響きます。太くすれば、低い音が響きます。また、細いまままっすぐ出せば、指向性が高くなり、ベルのラッパを大きく広げれば、音は拡散します。昔の蓄音機と呼ばれるレコードプレーヤーのベルが大きく開いているのは、針の小さな振動を大きく響かせるためです。楽器のベル部もこの性質を持っています。
 一番細いのは、オーボエの管頭部。リード部の直管の内径は、わずか4mm。管の端のベル部でも、内径は40mm程度です。
それに対して、一番太いのは、チューバでしょうね。ベル部は、顔が入ります....

 例えば、トロンボーンと、ユーフォニアム。この楽器は、長さはほぼ同じです。従って出てくる音の周波数は同じです。つまり、同じ高さの音だと言うことです。でも、トーンボーンの方が細くて、ユーフォニアムの方が太いですね。その違いをどう聞き取れますか?言葉で表現するのは難しいのですが、トロンボーンの方が艶やかな響き、ユーフォニアムが深い響きというと、イメージできますか?
 トロンボーンの方が細い管の中で音が干渉するのでストロークが短い響きで、音の高い成分によく溶け込み、振動と振動の隙間を響きで埋めることで、目で見える言い方をすれば、ざらざらな表面にワックスを塗って、ピカピカにしたような感じです。
 ユーフォニアムは、太いのでストロークが長く、低い音の厚みを増すような響きになります。ブォンではなく、ブォォォンという感じですね。えっ、かってわかりにくいですか?

 音の主成分である「振動」に大きな差はありません。これをどう伝えるか、どう反響させるかで、音の大きさや音質が変わります。
また、管が細いと内部抵抗が大きく、人の吹く力では、流量が制限されます。このことで、密度の濃い空気の流れが形成され、特に高い音での響きが良くなります。対して、管が太いと、吹く力全てを音の響きに向けられます。そのため、大きな「音」となります。管が細くて短いと、音が小さいかと言えば、そんなことはありません。ピッコロは、たった1本で、フルオーケストラの音を超える「音」となります。音のエネルギーと大きく聞こえる値は違います。また、低い音、高い音での指向性の違いも影響します。ピッコロは、大人数のオーケストラでの演奏でも、吹いている一を特定できますよね。

 低い音は、会場全体の空気を振動させます。そのため、チューバなどは上を向いています。コントラバスなどは、ステージの床に振動を伝えています。ベートーベンの交響曲第9番の第1楽章、8本ものコントラバスが一斉に弓を弾くと、ステージ、ホール全体が響いてまるで「地震」を思わせるような雰囲気となります。コントラバスの弓から出る音ではなくて、コントラバスの本体の内部で共鳴した音の振動が、楽器全体から、また足部よりステージの板に振動が伝わり、ステージ全体が振動板のように共振しているからです。
 管楽器は、チューバもそうですが、身体で抱えています。つまり、完全体の振動は身体で吸収しています。あくまでベル部から放出される「振動」だけで揺らぎを作っています。それでも、弦と違うのは、吹く息量です。この息の物理的な流れに振動が載るので、会場全体の「空気」を直接振動させているから、全体を揺るがす「低音」が出るのだと思います。
 会場が屋外のステージとなると、チューバの音も、意外と乾いた音に聞こえますね。軍隊行進のように屋外ステージをイメージする場合は、スーザ-フォンのように、ベル部を行進の先頭、ステージならば、聴衆側に向けて吹きます。同様に、マーチング用の管楽器は、ベル部が前方を向くように設計されています。これはこの原理で、楽器のほとんどが、屋内ステージでは、会場の壁や天井に反響することを前提に設計されている為であり、屋外演奏を主体と考えたとき、管の太さ、ベルの方向などは変わってきます。

 

 これらのことから、楽器の素材は、金属から木製までいろいろな素材が使われます。さらに、その素材の上に、塗料や鍍金をする事で、質量や反射率を変えることで、「音色」を作りだしています。
 

〇 楽器の倍音

 音は、周波数という特性を持っています。では、どうやるとその規則正しい周波数となるか。ここがフレキシブルに発生していれば、「雑音」ですが、一定の周波数で発振されていれば、「プー」という音と認識できます。実際に出て来る音は、いろいろな周波数(振動)が加わり、一定の周波数ではありません。そこが「音色」とか「音場」とかいわれる「音」を飾る要因です。

 

 また、周波数には、共振という現象もあります。例えば、静かな池の水面に、「石」を落とすと、綺麗な波紋が広がりますよね。これは周波数が目に見える現象です。では、ここで、もう一つ「石」を落とせば、どうなりますか?二つの波紋が広がり、重なります。重なった場所は、他の波紋よりも高い波になりますね。2つの周波数が一定であれば、二つの波紋を直線で繋いだ場所では、このひょっこり重なった部分も、一定の間隔で発振します。ここが共振と呼ばれる部分です。ところが、それ以外に広がった方向では、共振周波数は長めになるようです。もう一つが、別の周波数であると、その差ははっきりと出てきます。実際の音は、直接音以外にこの共振によって生み出された音も聞いていることとなります。
 管楽器の場合、管の内壁に何度も音がぶつかり反射することで、音の本来の周波数に様々な周波数が乗ることで、豊かな「響き」を作っています。

 さて、音階はどうでしょう。管の長さが同じなら、いつも同じ「音」となります。それでは、音階を作るのに、その音の数だけ、管を並べる必要があります。パイプオルガンは、その原理の上にありますね。それでは簡単に演奏が出来ないので、管の長さを変えられるように作りました。
 一つは、管の長さを、2つの管を重ねて繋いで、この2つの管をスライドさせることで、音を変える方法。トロンボーンですね。
 もう一つは、管の途中に切り替えるバルブを設けて、長さの異なる管に切り替える方法。トランペットですね。この切り替える方法に、ピストンバルブと、ロータリーバルブとあります。ピストンバルブはトランペット、ロータリーバルブは、ホルンです。
 そして、単純に管に穴を開けて、そこから空気を出す事で、実質の管の長さを変える方法。木管楽器がこれに当たります。穴を指で塞いだり、開けたりすることで、音階が作られます。

 この管の長さを変えて音を変える方法ですが、管の両端が空いている場合と、片方が閉じている場合とで、響き方が違います。通常の管楽器は、片方は口の中で閉じています。構造としては、閉管構造です。フルートなどは、両端が解放されているため、開管構造とよばれ、性質が違います。
 もう一つ、管の内径が一定の円柱形の形と、出口(ベル部)に向かってだんだん広がっていく円錐形とで、また違った性質となります。

 

 管の内径が一定の円柱形で開管構造であれば、出て来る音は、管の長さの2倍の周波数となります。ここに強い息を入れると、2倍音が発生し、1オクターブ高い音が出てきます。フルートがこの原理です。ただし、フルートは、内管の断面積よりも、リッププレート(口金)のホールの方が若干狭いので、完全な開管小僧では無いとも言われます。フルートを手前に回して、リッププレートを手前側にしてホールを唇で覆うようにすると、閉管としての特徴が出て、低い音になります。逆に、反対側に回して、ホールに唇がかからないようにすると、開管構造としての性質が強くなり、高い音になります。

 管の内径が一定の円柱形で、閉管構造となると、管長が同じならば、出て来る音は、開管構造より1オクターブ低い音が出ます。クラリネットがそうですね。フルートとクラリネットは、ほぼ同じ長さですので、フルートよりクラリネットの方が1オクターブ低い音が出ます。ちなみに、閉管構造円柱形は、クラリネットだけとなります。クラリネットはその周波数波形の通り、奇数倍音が発生しています。仮にドを吹いたとして、強く吹いたり、レジスターキイを押して吹くと、上のドではなく、更に高いソが出てきます。1オクターブ半高い音になる。これが特徴です。そのため、理論上4オクターブまでクラリネットは出せるので、クラッシックなどで重宝されています。一般に、奇数倍音は繊細で細かな表現が可能だと言われます。

 管の内径がベル部に向かって広がる円錐形で、閉管構造となると、ベル部の直径が広いため、同じ管長であれば、2倍音が出るようになっています。逆に言えば、2倍音になるように円錐形を広げたと言うことにもなります。この構造は、オーボエと、サックスが代表です。閉管構造で有ながら、2倍音つまり、1オクターブ上の音が出せるのです。このことで、オーボエもサックスも、基本的な運指は同じで、オクターブキーを使って音階を切り替えます。オーボエは、リード内径が4mmと非常に細いので、高音域から、最大で4オクターブ出来るようになっていますが、その分、吹く抵抗が強く難しいと言われます。サックスは、吹き口の直径が、比較的太く吹きやすいですが、出せる音階は2オクターブ半が限界です。そのため、ソプラノサックス(HighB♭)からアルトサックス(Es)、テナーサックス(B♭)、バリトンサックス(LowEs)、バスサックス(LowB♭)と、楽器の大きさを変えて、幅広い音階が出せるように工夫しています。

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