
奈菜 ホルン担当
奈菜(なな)


ホルンの低音域の響きに憧れてホルンを担当。
しかし、世界で一番難しいとされるホルンの扱いに翻弄され、なかなか音が出ず苦労する。いつも音をはずす事が多く、またコントーロール出来て無く悔しい思いを続けていた。そのこともあり、常にチューナーを持ち歩き、譜面台に置いて正しい音が常に出せるようにした事で、音が安定してくるようになった。しかし、ベルが後ろを向いている事で実は、観客席からは音が外れて聞こえるということに気がつかなかった。奈菜は人とつるむことは得意ではない。人は人、自分は自分と思いつつ、誰かに認められたいという願望はある。しかし、そのホルンの音が安定しないのはコンプレックスになっていた。
本来は、明るく楽しいことが好きで、引っ込み思案な性格と、やりたい方向のアンバランスに悩んでいた事もあり、華やかな吹奏楽部に入部した。しかし、たまたまその「音」に憧れてしまった「ホルン」が上手く吹けず、引っ込み思案に拍車をかけてしまった時期が合った。
顧問の三田から合奏練習の時、音が合わない、高いと散々怒鳴られても、意味が分からなかった。ちゃんとチューナーの針は正しい位置である。次に三田から「このグロッケンに合わなきゃ、気持ち悪いだろ!」と言われて気がついた。合わせるのはチューナーの針ではなく、「音」であると。そしてこの一言で、吹っ切ることとなり、いつしかみんなを魅了するホルンのソロが吹けるようになるのである。
この時から、奈菜は吹っ切れたようである。ホルンの音は牧歌的でどこか優しい響きであるが、それは、後ろの壁や周囲に反射した音を聞くからそのように感じるのである。後ろに回って、ベルの方向から聞くと、トロンボーンのように、太くて強い金属的な響きを聞くことができる。これに奈菜は気がついたのである。「優しい響き」を意識すること無く、他の金管のように吹けば、自然と「優しい響き」になるのである。出す「音」にこだわらす、出た「音」を想像すれば良い。
音に自信が出れば、自分自身に自信がもて、その結果、どんどん人とコミュニケーションすることが楽しく思えるのである。一見、引っ込み思案だった性格も、どんどん前に出て行けるようになり、冗談や滑稽な格好をすることも、楽しかった。まさに「ホルン」が性格を変えてくれたようである。