top of page

彩 フルート・ピッコロ担当

彩(あや)

 親の転勤で2年から転入してきた。前の学校では美術部で、絵を描いたりするのが得意である。前に出たがる性格も強く吹奏楽部に憧れていた。転入を機に吹奏楽部へ入部した。元々はアルトサックスを希望したが、フルートパートが1人欠員であったこともあり、フルートとなる。

 1年生と同じ扱いで全く吹けない時に「私、ソロ吹きたい」と言ったことが2年生全員のひんしゅくを買ってしまった。しかし、そんなことに負ける子ではなく、ぐんぐん力を付けていった。髪の毛は、おでこを出したポニーテールで目鼻立ちがきれいで、背筋がすらっとしている。フルートパートの3年の先輩がすらっと立って吹く音色に憧れ、最初から「姿勢」にこだわり、常に「美しく吹く」事をイメージしている。気がつくと、2年後半にはソロを担当できるほど上達していった。

 顧問の三田の考えの中で、フルートは各学年3名を定員としていた。ピッコロ、1st.2nd.という分担で、当面は3人とも全てのパートができるように練習させていた。そのこともあり、彩も、1st.を受け持つことも、ピッコロを受け持つこともあった。ソロも順番にやらせてもらえ、地域の演奏会とはいえ、指揮者の後ろ、つまり観客の一番前に立ってのソロを経験することもできた。その普通なら緊張して震えてしまうような環境でも、にっこりとすらっと立って、堂々とソロを演奏しきることができた。

 バスクラで起きた、2年生から1年生がソロを奪い取るという下克上。実力社会を見せつけられ、逆に彩は元気が出てきた。ソロはもとより、名実ともに1st.を取れるかも知れないと。その思いと、それは嫌だという今日子との闘いは、日に日に強くなっていったのである。組織的にもガタガタになり、内輪もめが発展して、部活全体を揺るがせる事件へと発展をし、合宿前に部活休止となる事態となった。

 彩は彩として、妥協するのは嫌であるが、自分を推し進めるだけでは、周りから認められないことに気がつく。急に優しくなる今日子の心の中を感じ、もっと前向きに進めようとするフルートパートのパーリーの美奈の気持ちも察し、自分が引くときは引くという事を覚えることとなる。自分の「音」を主張するのでは無く、相手の「音」を尊重し、どうそこに合わせて盛り上げていくか。合奏はひとりではできない。みんなが自己主張したのでは、音はバラバラで、良い合奏にはならない。一旦引いて、支えて盛り上げる。今、何をしなければならないか。自分が1st.になることが目的では無く、東海大会の門を叩くことである。そのために何をしなければならないのか。改めて自分を省みることとなる。

表紙タイトル300.png
めざせ東海大会シーズン1画像.png
めざせ東海大会シーズン2画像.png

※ この物語は、とある、地方中学校を舞台に繰り広げる、無謀かつ純粋な挑戦の記録です。
※ ストーリー全体はフィクションでありますが、一つ一つのエピソードは実話を基に、アレンジをして書かれています。
※ 登場する実在の学校、団体、個人等と、全く関係・関連はありません。
※ この作品「めざせ!東海大会♪~ある吹奏楽部の挑戦~」は、著作物であり、版権は著者に依存します。無断転載、転用はお断りします。
※ 原作者(著者):ホルン太郎 なお、この作品は、取材で集めた実話をヒントに新たに書きおろしたフィクションです。
※ この作品は、一般市民団体「まちなか演奏会実行委員会」によって公開されています。

bottom of page