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杏 トランペット担当
杏(あん)
トランペットの華やかな音色に惚れて、トランペットパートを希望。顧問の三田から、「楽器は、どうせ買うのなら一番良いと思う物を買うと良い」と言われ、楽器店へ。楽器店に並ぶトランペットの中で、ひときわ目立つ銀色のトランペットを選ぶことになる。バックのストラディバリウスと呼ばれる銘楽器である。杏の両親は清水の舞台から飛び降りる覚悟で、購入した。
おしゃれが好きで、流行や、色合いやデザインにこだわるが、なぜか女性っぽさが少なく、みんなには「ありゃ男だ」と、言われている。極度の緊張症で、普段のゆったりとした性格とは裏腹に、ソロに立つとガチガチになってしまう。
3年生が引退すると、生徒会役員に立候補するとともに、トランペットのパーリーとなる。目立つことが好きな割に、極度のあがり症。その克服にいろいろチャレンジしていた。女子の割に肩幅があり肺活量的には問題は無い。問題はその出し方と楽器にあった。バックのストラディバリウスというモデル。確かに誰もが良い楽器と評価する。しかし、この楽器をこなすにはそれ相応の技術が必要である。覚えはじめの初心者にとっては、吹きにくく息が続かない難しい楽器である。小さく吹くとちゃんと吹けるのに、ソロとなって大きく吹こうとすると、「プスッ」と音にならない。姿勢の問題。呼吸法とアンブシェアの問題。緊張の問題、それと楽器の問題である。バックは容易に微笑みを返してはくれないようだ。杏の悩みでもあった。