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第18話

まさかの顧問の緊急入院

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 かつて黄金期とまで言われた、地方中学校。担任が変わったこともあり、A編成すら維持すら心配されるようになってしまった。「これではだめだ!私が3年で東海大会に連れていく!」新たな吹部顧問を迎えて、新生山田中学校は、東海大会に向けて、新たな挑戦を始めるのであった.....。

めざせ!東海大会♪ シーズン2

 さて、夏合宿のどたばたが一段落して、美奈の父はやっと落ち着いて自宅でお酒を飲むことができた。合宿前から保護者会役員打合せや関係各所との調整などがあり、合宿も結局2泊付き添うこととなり、1週間禁酒状態であった。ある意味肝臓を考えれば、良いことではあるが、緊張し続けたイベントで、自宅に戻っての「お酒」は、最高の時間であった。
 突然、携帯が鳴り、合宿施設から電話が入る。嫌な予感である。聞くと、305号室で忘れ物があったとのこと。やれやれ、「今はもう酒が入っているので、明日取りに行きます」と言うことで、ゆったりと過ごすお休みは既に無くなってしまった。
 予定では、翌日は久しぶりの1日お休みで、夜は安倍川の花火大会である。美奈をはじめ、子供達は浴衣を着てお友達同志、花火鑑賞のはずであったが、まさかの台風で中止。それはそれで、ゆっくり休養が取れて体調不良の回復ができることであろう。練習は、翌日曜日からとなっていて、ラスト1週間は、地区大会突破のための集中練習となっていた。

 翌朝、まだ台風の影響は無く少し涼しく過ごしやすい朝であった。焼津まで忘れ物を取りに行った帰り、さんざん合宿がらみで焼津まで10往復はしたであろう、ここ焼津のお土産でもと、地元の魚屋に寄ることとした。台風の影響で近海魚は無いとして、こういう日こそ、冷凍の「まぐろ」が安値で放出されるであろうと、期待して行った。
 お店には、やはり近海生魚はほぼ無く、その分マグロが訳あり物から高級物まで並べられていた。ミナミマグロが100gで598円。中トロで698円。中落ちはなんと298円。この色といい、脂ののりといい、やはり「ミナミマグロ」であった。中トロ短冊訳あり3割引もある。自分へのご褒美だと美奈の父は台風で2日間外に出ない事を想定して多めに買い込んだのである。子供達も大好きな「ネギトロ食べ放題!」だと。ミナミマグロの中落ちと、赤身の切り落としを包丁で叩く、自家製ミナミマグロのネギトロで、魚脂を混ぜる市販のネギトロではなく、本物の中落ちであるが、100g298円である。これは、娘、美奈へのご褒美も兼ねていた。

 さて家に帰ると、メールが入ってきた。顧問の三田からである。昨日までのお礼文が書かれていて、さて、マグロで朝から呑もうかな、と思った瞬間、体の動きが止まってしまった。
 書かれていたのは、緊急入院したという文字。よく読むと、「昨夜、合宿から自宅に戻った夜中、突然お腹が痛くなり、救急入院した」とのこと。「検査結果は、胆石であった。半年ほど前にも1回胆石が出て、緊急入院したことがあった。その時は、薬剤で散らしたのであるが、今回は、大会直前である。いつ再発するか分からない状態ではまずいので、3泊4日程度で手術処置が完了するとのことを受けて、今から緊急手術をすることとなった」とのことであった。「大会までには必ず復帰できる」と書かれていた。そのため、「とりあえず、日曜の練習は休み。それ以降は、これから手配する。」と言う内容であった。

 吹奏楽コンクールの規定で、指揮は学校の教師でなければだめだそうである。高山氏ではだめで、もちろん保護者会の会長でもだめ。今年から、女性の教師が2人副顧問として就いてくれることになったが、音楽とは全く縁の無い先生で、あくまで生徒対応のみを補助しているだけである。つまり、顧問の三田が復活できなければ、「終わり」である。非常に危険な賭であった。

 まぁ、ちゃんと手術が完了し順調に回復をしたとすれば、早くて火曜日。遅くとも木曜日には退院できるので、間に合うと言うことであるが、何も無く順調に回復した場合である。簡単なカテーテル手術ではあるが、絶対大丈夫とい手術でも無い。
 激震が走った。

 美奈の父は、とりあえず、バタバタしても仕方無いので、日曜日の練習は「休み」と、緊急連絡網を回すこととなった。まずは、生徒の連絡網で、部長の花愛に連絡を入れて、連絡網に流すこととなった。ここで新たな問題が発生した。このところの個人情報保護のため、部活では連絡網は作らないことになっていた。学校のクラス単位では作ったようであるが、公開はされていない。部員達の連絡網は、昨年作った物で2年3年は網羅されているが1年生は入っていない。とりあえず、2,3年に流すとして、1年は保護者会で担当することとした。もちろん、保護者会は保護者会で、緊急一斉メールを流したが、このメールというのがややこしくて、必ずしも送受信が出来ているかが分からないのである。迷惑メール防止のことで、指定されたPCやスマホから出なければ送受信が出来ない場合が多い。この時点で1年生の連絡が出来ない人が4人いた。手分けをして、なんとか連絡を取ることが出来た。この緊急連絡を流すことに半日を要した。便利な世の中のようで、面倒な世の中である。

 翌朝10時、美奈の父は、病院にお見舞いがてら今後の指示をもらいに向かった。顧問の三田は、鼻に酸素吸入用の管を付けてはいたが、元気そうであった。合宿で指導をしてもらえた高山氏が、火、水の2日間、A編成を急遽指導をしてもらえることになった。B編成に関しては打診中で、いまのところは未対応である。月曜日は半日練習として、火曜日以降は1日練習で弁当持ちとするよう決定をした。

 さて、事は深刻である。でもとりあえず指導者の手配が出来たので、遊んでいるわけにはいかない。立て直しを図る必要がある。保護者会会長である美奈の父は、急遽「緊急パーリー会議」を開催することとした。三役とパーリーに直接話をして、この緊急事態を立て直そうと考えたのである。早速、集まれるパーリー、パーリーが無理ならばパーリー代理を立てるように美奈が電話を掛けて回った。
 なんと「休み」と決まると、いろいろ予定を入れる現代っ子である。「塾」を入れた子、「レッスン」を入れた子。「体調が悪い」は、まぁ仕方が無いとして、「遊びに行ってる」子も何人かいたのである。顧問が緊急入院、緊急手術をしたと言うことで、ラッキーとばかりに遊びに行く、この危機感、信じがたいものであるが、こらが中学生。まだ子供である。その代表が部長の花愛であった。なんと家族と浜松に遊びに行ってしまっていた。朝11時半のことである。
 それでは困ると言うことで、14時には地元ハンバーガー店で「緊急パーリー会議」を開くのでと伝えると、「急遽これから帰って間に合わせます」と答えてきた。

 大会前に急に出来た休日である。これから先、地区大会、県大会と2週間はまた休みが無くなる。貴重な休日であることは理解ができる。しかし、緊急事態で今後どのようになるかが分からないという中での行動。保護者会の会長としてかなりがっかりした。

 それを含めて立て直す必要がある。早急に引き締めて練習を続ける必要がある。そのためには、部長花愛自身の自覚が必要である。自分たちが必至に立て直そうと思わなければ、一気に崩壊する。それでは、県大会はおろか地区大会も突破できるか分からない。保護者会もいくら手を貸しても当事者ではない。本人達のやる気が無ければ、何もならないのである。

 美奈も必至で電話を回し、なんとか3人を除いて集めることが出来た。クラリネットパートは、エスクラの梨華しか連絡が出来なかった。この段階でパーリーの明日香の電話番号を誰も知らなかったのである。

 連絡が取れ出席が出来ると回答したのは、部長の花愛、フルートはパーリーの美奈、クラリネットはエスクラの梨華。サックスは美奈と仲の良いソプラノサックス担当。トロンボーンは優子。ホルンは奈菜であった。パーカスは琴音が体調不良で、彩乃が代理で急遽走って駆けつけてきた。
 木低(バスクラ、ファゴット、バリサク)は、バスクラの絵里が駆けつけた。
 トランペットの杏は体調不良で代理は連絡が出来なかった。ETC(ユーフォ、チューバ、コントラバス)は連絡が取れなかった。急な招集で、7パートと部長。まぁ、なんとかなるであろう。

 まずは、A編は高倉氏が火曜日、水曜日の午前午後を見てもらえること。そのため、弁当持ちの1日練となることを伝えると、みんなほっとした表情であった。ここに来て始めて、事の重大さが分かったようだ。緊急入院、緊急手術がどういうことなのか、今理解したようだった。もし、このタイミングがもう少し遅く大会で指揮が振れなかったら、「失格」であったこと。目を丸くして、顔色が失われた。ようやく理解したようであった。

 学校での練習は、A編は3階多目的ホールと呼ばれる、ちょっと広い廊下で行う。B編は狭いがエアコン完備の音楽室で行う。1年が涼しい音楽室、2、3年の主力が暑い廊下での演奏。なんとなくみんな腑に落ちない様であった。高山氏が77歳という高齢である事から、急遽、隣の山田地区生涯学習センターをホールを押さえる必要があったが、事務が休んでいるため火曜日の朝に保護者会会長が直接問い合わせることとなった。
 みんなが1年のことを心配し始めた。そうはいっても指導者なしの野放しとなるからである。合宿の時お世話になった水谷氏は、他の仕事を持っているため平日は難しいとのこと。お願いはしているが、望みは薄いとのことを伝え、練習の合間に1年にも目配りして欲しいと伝えた。
 部長の花愛が、いつになく真剣なまなざしで、
「昨日のような、連絡網では伝わったかどうか分からず、ずっと心配することとなったので、連絡方法を変えます。パーリーは、パート全員に必ず直接、電話で伝えてください。そして、全員に伝わったら、私に電話してください。電話が繋がらなかったら、パーリーが責任を持って、何度も電話して必ず伝えてください。私への電話は、夜の10時を越えてもかまいません。」
と話をした。
 パーリーは、「えぇー、面倒だよ」とか、「うちのパート、誰ともLINEで繋がっていないから、10人全員電話するの?」エスクラの梨華である。パーリーでも無いので、言いたい気持ちは分かる。それでも、花愛は、「必ず、電話して」と引き下がらなかった。集まった代理を含むパーリーは覚悟を決めた。それは、部長花愛の覚悟を悟ったからである。これは真剣な話だ。がんばる時だ。そう理解したようであった。

               *    *    *

 翌月曜日、子供達は午前練と言うことであったが、副顧問は午後出勤となっていて、基本的に誰も指導者がいない状態である。保護者会の会長は気になり、会社の昼の休憩をちょっと早めに取り、学校の様子を覗きに行った。校舎の階段を上ると、各セッションに分かれて練習をしていた。美奈も、オーボエ、アルトサックス、ソプラノサックスと、インテルメッツォの「娘の唄」のソロのセッションの音合わせをしていた。
 各パート、セッション毎、無駄話も無く何度も練習をしていた。一昔前は各教室に分散すると、笑い話あり音は無いと言う状態であったが、さすがに真剣に練習をしていた。ここはこうしようとか、この方がいいねと話しながら、「それではもう一回。」と、繰り返して一つ一つを確認していた。顧問や指導監督者がいない中で、この雰囲気は、この山田中としては喜ばしいことである。
 
 保護者会会長はその足で、病院を訪れ顧問を見舞った。今見てきた光景を話し、「先生が入院されたこと、逆に、みんなの心がまとまったと考えれば、良かったかも知れませんね」と、伝えた。まだ、子供達である。こどもたちの、知識経験だけでは不足してい事も多くあるが、危機感が共有できて同じ方向を見ようとしている姿は、「結果良し」と思えるようであった。

 さて、翌日、生涯学習センターのホールが借りれるか手配をし、この週、翌週と、取れるだけホールを押さえるように顧問が指示をした。ホール練と言うことより、避暑という意味である。さらにB編成。今はA編を除く全員で練習をしている。37名である。2名休部がでているので実質35名。B編成は30名までとなるので、5名は落ちることとなる。このメンバーの人選ほぼ出来ていて後でメールするので、プリントして発表して欲しいと頼まれた。これは重大事である。事前に漏れるのも良くないので、会長に直接メールして、印刷して、封印して、翌朝、部長の花愛がみんなの前で開封して貼り出す手配をした。
 昨年、美奈が直前で落とされた。同じ事は毎年起きるのである。これは、どの世界も当たり前にある、実力勝負の部分である。かといって、非常に心に深く影響を落とすことで、選ばれし者、選ばれざる者、それぞれの思いと、対応の仕方を考えなければならない。部長の花愛は、気が重かった。

 翌火曜日。保護者会の会長が朝一で生涯学習センターに電話をしたところ、本日午後がとりあえず空いているとのことであった。すかさず仮押さえをして、急遽学校に向かった。まず、学校で練習を始める直前であった高山氏と、部長の花愛に伝え、午前練を早めに切り上げ、12時45分には鍵が借りられるので、12時40分には楽器を搬出始めるようにと伝え、生涯学習センターに借りる手続きをしに向かった。
 手続きをしながら他に空いている時間を探すと、今週末金曜日に終日。翌、火曜日に午後が空いていた。翌週は地区大会突破したらの話であるが、もちろん、地区大会は突破する予定で組んでいた。水曜日はあらかじめ予約していたマリナートの終日ホール練。最終チェックは、ここで行うこととしている。音量とか速度である。
 その翌日木曜日も、生涯学習センターホールが午後借りられた。連続して借りられると、楽器の移動とかが楽ではあるが、この際贅沢は言っていられない。

 問題はこの火曜日、「ここ一番の暑さ」となっていた。合宿の初日で救急搬送をした日よりも2度高く、全日よりも2度高い。多少体が慣れてきたとはいえ、エアコンの効かない学舎の廊下である。熱中症対策を急遽行うこととした。
 塩タブレット、スポールドリンク系ゼリー、ビタミン等補給ゼリー、ひんやりシートを人数分購入して配布した。特に塩タブレットは、とかく「この味嫌い」とかで食べない子がでることが多いが、今回は部長の花愛から「これは薬だと思って、全員で食べてください」と、ひとりひとり手渡し、その場で食べさせるという徹底ぶりを施した。この日は、1年のB編を副顧問が見ていてもらえたので、2,3年のA編は、心おきなく生涯学習センターホールで練習が出来た。

 しかし、ここにも問題があった。
 これは他校も同じ条件であるが、高校の体験入学、オープンキャンパスが何校か実施されている。この日だけで、なんと14名も参加することとなっていて、およそ1/3のメンバーが合奏練習を休んでいることである。今週末が地区大会で、まぁ地区大会ならば、なんとかなるかと甘く考えているが、翌週は、県大会である。これは、3年生にしてみれば、今後の人生にとって重要なことであるので、顧問も参加をして良いと認めているが、それにしても1/3もいないと、合奏にならない。この時期にこのような事を企画する高校にも、配慮を願いたいものである。3年である事から、当然ソロパートであり、1stパートであり、残されたメンバーでの合奏と言ってどの程度音が合わせられるものであろうか。
 この時点でこの結論は出る話ではない。他の高校と言っても、静岡市の話で浜松市の状況は分からない。同じ時期に重なっているだろうか。
 ちなみに、浜松地区ナンバー1の高台中学は、ほぼ全員が吹奏楽枠という推薦で進学を決めている。そのため、翌1月中旬まで遠征と、アンコンに出場している。学区制の公立中学として、これもどうかと思う。良きに悪しきに他に選択が出来ないという環境である。

 しかし、これは逆に良かったかも知れない。いない人のパートを他の子が変わりを持って演奏する。例えば、1st.と、2nd.のフルート2重奏セッション。2nd.がオープンスクールで不在のため、ピッコロ担当がサブに付いていたので、代役を務める。1st.は今日子であるが、2nd.は彩である。もともと2nd.は、ピッコロ担当に楽器変更となっているので、彩は、昨年5月に初めてフルートを触ってから、1年2ヶ月で、2nd.に上り詰めていた。もともと、全員で1st.2nd.ピッコロの3パートを回して練習させてきたので、万が一の場合は代役ができるように自然と練習をしていたのである。

 さて、高齢の高山先生。急遽のピンチヒッターを請けてもらうも、こういう状況でまともな練習とはなっていなかった。全体のバランスをと言うのではなく、ここのパートが確実に演奏してもらえればよしという事とした。散々合宿の時に「サックスの音が大きすぎる!」と行っていた対策は、できなかった。パート毎の音の大きさはバラバラで、大里生涯学習センターホールでの通し練でも、音はバラバラ、音程が悪いのか、音色が悪いのか、テンポが合わないのか、単に指を間違えているのか、誰が悪いかも、どこが悪いかもよく分からないが、音がバラバラで濁っていることだけは、誰もが認識はしていた。

               *    *    *

 木曜日に、顧問の三田が無事復帰をして、高山氏と交代した。三田も絶好調ではない体を押しての登板である。まずは、今この瞬間のA編成、B編成をみて、できる対策を考えた。そして、B編のメンバーを発表した。結局、非常に重要な発表なので、自分が不在の中、部長の花愛に発表させるのは危険と判断したのである。A編にもB編にも採用されなかった2年生もいる。大抜擢で1年生がA編に出ているのもいる。まさに、下克上である。

 元々は、昨年5名を選抜から落とさなければならない、辛い「選抜」の経験から、A編B編両方に出ると決めたものの、また5名落とすこととなった。運命である。午前中は、各パートで練習をさせて、早めに山田地区生涯学習センターホールに入り、みっちり合奏練習を行った。しかし、このホールは、音楽演奏のために作ったホールではないこともあり、音響はとても良いとは言えない中での、パートの音量合わせは、的を得なかった。音量はバラバラであったが、大きな欠点もないので、このままいけると判断をした。

 実は保護者会の会長は、胸を撫で下ろしていた。顧問の三田の復活はもちろん喜ばしいことであるが、実は、三田は新しい譜面を作っていたのである。自由曲「はかなき人生」は、三田がどうしてもやりたかった曲である。想いの程が違うのである。合宿の時も入院中も、パソコンで編曲をトライしていた。インテルメッツォを入れるに当たり、そのままでは時間オーバーとなるため、上手く繋いで時間内としたが、それだけでなく、いろいろとチャレンジしたかったようだ。応援の高山氏も、頭を抱えていた。高山氏の信頼のおける「もうひとりの教え子も同じようで、ギリギリまで挑戦しようとする。それ自体が悪いのではないが、ある段階で、「これだ」と決めたら、それを追求して欲しいと。どうしてその先を変えていこうと思うのだろうか。子供達が付いてきてないよなぁ。」と。
 保護者会の会長も、性格としては似ていた。それは高山氏も同じであろう。ギリギリまで攻め続けたい。マニアックなのである。でも、子供達全員をその意をくませて、同じ方向を見させるには、もう時間が無いのである。それより、今の譜面を何度も練習をして、たまたま「おっ、今のは良かった」ではなく、何度も安定して「良いね」とさせなければならない。その隠された譜面は、表に出して欲しくなかったのである。そういう意味で、ここでの三田の入院騒ぎは、そこに手を付けず、現有勢力のまま演奏が続けられるのであった。

 コンクールは、金曜日から行われているが、山田中のA編成は、土曜日。B編成は日曜日と言う事で、金曜日の練習は、最終音合わせと、通し練習を2回やって、早々と終了した。

 そして、静岡県中部地区大会を迎えるのである。

 めざせ!東海大会♪

※ この物語は、とある、地方中学校を舞台に繰り広げる、無謀かつ純粋な挑戦の記録です。
※ ストーリー全体はフィクションでありますが、一つ一つのエピソードは実話を基に、アレンジをして書かれています。
※ 登場する実在の学校、団体、個人等と、全く関係・関連はありません。
※ この作品「めざせ!東海大会♪~ある吹奏楽部の挑戦~」は、著作物であり、版権は著者に依存します。無断転載、転用はお断りします。
※ 原作者(著者):ホルン太郎 なお、この作品は、取材で集めた実話をヒントに新たに書きおろしたフィクションです。
※ この作品は、一般市民団体「まちなか演奏会実行委員会」によって公開されています。

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