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超初級イングリッシュホルンの吹き方

​超初級管楽器の吹き方講座

 オーボエよりも長い楽器、見たことありません?
 そう、吹奏楽の演奏会の時、独特の音色で低音から響かせる「ソロ」の楽器。有名な曲で言えば、ドボルザークの交響曲第9番「新世界」第2楽章の「家路」ですね。「遠き山に日は落ちて~♪」と言った方がわかりやすいかな。
 これより低いと、ファゴットが出てきます。オーボエとファゴットの中間に位置する音域です。
div> あまり一般的ではないので、楽器の出荷数が少ないという事で、オーボエより同じ程度の音色の品質の楽器として、倍の値段となります。そもそも、グラナディラの素材も、1.5倍以上使っているので、高いと言えば高いのも仕方ないと思います。
 それでも、オーボエ奏者の憧れの楽器。イングリッシュホルン。
 でも、実際は、そんなにハードルが高いわけではないようですよ。
 ある程度、オーボエが吹けたのなら、挑戦してみましょう。
 実は、オーボエよりも吹きやすいかも知れません。

 ※あくまで超初心者に、興味を持ってもらうことを前提としています。コンクールを狙う吹奏楽部生さんや、ソロを狙うプロをめざす人には、全く参考になりません。変な癖が付く前に、ちゃんとした指導者の下で本当の「レッスン」を受けてくださいね。

超初級イングリッシュホルン吹き方講座

あははっ、のおっさんの吹くシーン

 オーボエ歴 28時間のおじさんが、
初めてイングリッシュホルンを吹いた映像です。
これで、テイク4目です。
 今の課題は、音色じゃありません。
まず、「ファ」の音が間違わないこと.....


 組立と準備


イングリッシュホルン組立前-min

 楽器を組み立てて、演奏出来る態勢を整えましょう。
 基本的手順は、オーボエと同じです。オーボエと違うのは、楽器が長くて重いこと。取り回す際、思ったより楽器が大ぶりになるので、周りにぶつけないように慎重に取り扱ってくださいね。
 小さなカップに水を張り、リードを浸けます。1,2分浸かれば良いです。ここが短いと、リード割れを起こしやすいです。ここが長いと、リードがしなって逆に開きすぎて、音になりません。

EHリード準備

 さて、寒い日は、木製楽器は注意してください。寒い楽器庫から出してきたばかりは、楽器が冷え切っています。この状態で、バンバン吹くと、一気に呼気が結露し、また、急激な温度変化も重なって、木製部分が割れやすくなります。もともと、木製は年輪があり、それに沿って割れやすい構造を持っています。そこに来て、急激な温度変化や、湿度の変化、水気等が重なれば、割れやすくなるのは、自然の摂理。多かれ少なかれ、どんな木製楽器も同じ問題点があります。一度割れると、たとえ補習しても、年輪によって無理に形づけられていたので、力を解放したく、割れが広がりやすくなります。
 なるたけ、割れないように気を配ることが、楽器を長持ちさせるポイントです。割れたり、別の部材で補填したりすれば、当然、密度が変わることで響きが変わり、音色に影響が出ます。

EH_LowE250-min
LowEキイ

 楽器庫から出したら、室温に5分程度さらし、まず、ボーカルだけさして、LowE(オーボエで言うところのLowB)を指で押した状態(全閉)で、息だけを吹き入れます。1分程度吹き入れたら、室温に慣らします。これを1,2回繰り返して、徐々に管を温めます。これをやらないで吹くと、半音から1音ぐらい低い音になり、調整できなくなります。同時にリードを水につければ、ほぼ同じタイミングで、楽器が吹ける状態に仕上がります。

リードとボーカル-min
 ボーカルは、通常2種類用意されています。寒い冬は、空気の伝わる速度が遅くなり、低い音が出ます。そのため、管長は短くして調音します。ボーカルを短い物を使います。逆に暑い夏は、音の伝わる速度が早くなるため、音が高くなります。その為、長いボーカルを使います。その後の微調整は、ボーカルのコルクをどこまで差し込むかで調整します。ボーカルとリードの位置は、ぽんとはめた位置で固定です。
 さて、直持ちの場合はともかく、ショルダーを使うときは、このリードの位置と唇の位置を調節します。ここが合わないと正しい音が出ません。


 正しい姿勢


 2枚リード楽器ですので、上下のリードに均等に唇圧がかかるようにしたい。でも、それでは、楽器が長すぎて手が届かない.....
 そのため、イングリッシュホルンは、リードのチューブが曲がって楽器に刺さるようになっています。このチューブ部分が独立したパーツで、「ボーカル」と呼ばれています。この構造は、ファゴットに似ていて、オーボエの仲間では、ダモーレと呼ばれる、オーボエとイングリッシュホルンの中間に位置する楽器にも使われています。このボーカルの長さが、通常2種類用意され、気温の変化によって、微調整しやすくなっています。その当たりも、オーボエよりもチューニングしやすいと思います。
 さて、ボーカルに角度が付いているため、オーボエほど楽器を持ち上げなくてもよく、オーボエより遙かに思い楽器に振り回される事はなさそうです。でも、重いグラナディラ素材です。右の親指が相当痛くなりますね。万が一、落としたときの事も考えて、ショルダーを付けると安心できます。

EHネックストラップ

 とりあえずの運指は、全くオーボエと同じで咥える角度は、クラリネット並で十分です。それでも、クラリネットよりは高めに持つと、音が出しやすいですね。オーボエと、クラリネットの半分ぐらいの高さの角度が良いかも知れません。



 リードだけで吹いてみよう!


 さて、リードだけで、吹いてみましょう。
 びゃー、びゃーという音が出れば、よいです。俗にカラスが喧嘩している時の鳴き声とも言われます。
 で、このリードの音出しを、1日10分でもやっていけば、頬の筋肉がついてくると言われます。初心者は、頬の筋肉ができていません。そのため、唇に力を入れて「噛む」ように、つよくリードを押してしますのです。そのため、リードが振動しにくくなり、強い息圧が必要となり、苦しくて音が長く吹けないことになります。
 そこで、頬の筋肉をつけて、アンブシュアが安定するようにすればよいのです。これは、ほぼすべての管楽器に通じることで、楽器によってアンブシュアや、アパチュパの形状が異なるものの、基本的な「形」は同じです。
 楽器を取り出すと、組み立て、片付けの際のスワブがけ、接合部の清掃などと、いろいろ面倒です。ここだけでも、10分という時間を使います。毎日練習といってもなかなかできないですよね。
 そこで、リードだけの練習はいかがでしょうか?
 リードを水につけて準備ができたら、リードだけ口にくわえて、「びゃーびゃー」と音だしましょう。軽く、右手でリードのチューブを持ちましょう。うまくなると、手で持たなくても唇にホールドできますが、初心者は頬の筋肉と唇の圧力の関係が安定していないため、吹いている最中にリードを落としてしまいます。リードが落ちて床に当たると、まず、リードの先端が欠けちゃいます。1本3,500円ですよ。大事にしましょう。

 これを、10分。つまらないといえばつまらないですが、気軽な練習です。これでかなりアンブシュアが安定手していきます。
 というか、最初は、10分できないです。頬の筋肉が突っ張って、リードを加えることすらできなくなります。
また、音出しをしていると、自然に唇の中でリードが浮いた感じになり、その後、ぽろっと唇から落ちます。
さらに疲れてくると、リードの周りから空気が漏れて、音も出るけど空気が漏れるという状況になります。
 ロングトーンで10分。これが安定してできるようになった頃、大分よい音色が吹けるようになっているはずです。

リード250-min

 イングリッシュホルンのリードは、店頭に置いているケースが少なく、注文販売(取り寄せ)のケースがほとんど。その為、注文するにも、専門の店員さんや、通販でも、専門のスタッフがいるお店が良いと思います。「初心者向け」とか、「高音域を出したい」とか、「低音が苦手」とか、とにかく、いろいろとこちらの状況を伝えて、近い物を選んでもらえるお店を作りましょう。
 オーボエや、ファゴットは、お店で選べることが多いです。そこが、流通量の少ない楽器の困ったところですね。


 逆複式呼吸を覚えよう


 オーボエは、「息が余る楽器」と言われています。その対する「息が足りなくなる楽器」はフルートを指します。理由は簡単。内径わずか4mmの細いストローよりまだ細い管に息を入れるということは、非常に難しいです。イングリッシュホルンは、オーボエの仲間です。オーボエよりも低い音を担当するので、それなりに腹圧と流速が必要となります。

 物理学の「流体力学」で言えば、壁面の抵抗が流れの力に対して相対的に強くなる現象です。通常の管であれば、壁面のながれは抵抗があり、遅くなりますが、中心に行くにつれて、流速が早まります。それは、壁面の抵抗よりも流れる力の方が大きくなっていくからです。
 ところが、直径4mmという細さになると、こちら側の壁面の抵抗と、反対側の壁面の抵抗の方が強くなり、中心付近でも強い流れが確保出来ません。そこで、流れが停滞します。この細い流れでは、リードは鳴らないし、息も詰まります。
 そこで、流速ではなく圧力差を使い空気の流れを作ります。その為の呼吸法が、逆腹式呼吸です。

 腹式呼吸は、横隔膜の動きを使って、流速を高める呼吸法です。それは、通常の肺式呼吸に対して流速が早いという意味です。
 肺式呼吸は肋骨金を使って、肺全体を広げる事で、肺胞一杯に息を入れ、肺胞一杯の息を吐き出します。1回の呼吸で多くの量を出し入れできます。その為、通常の呼吸に使われ、効率の良い呼吸をしています。
 腹式呼吸は、横隔膜の瞬時に動く筋力で、肺全体を押しつぶすことで、勢いのある呼吸が出来ます。
 よく言う感覚だと、お腹に拳で思い切り殴る、時のお腹を引っ込める動きをイメージすると、強烈な流速を生むことができます。
 逆腹式呼吸は、口から息を吐き出しながら、下腹部を膨らませます。更に、脇腹から背中の方にその膨らませを広げるようにお腹に力を入れます。このことで、下腹部から腹筋全体を締め上げ、腹腔内圧を高めます。この高い圧力で、肺胞の空気を加圧して、圧力差で大気開放する呼吸法です。

 サックスなどでも調子付けて大きな音を出していると、ロングトーンの時、空気が足りなくなることがあります。その時は、今引っ込めていた下腹部を逆に膨らませて、肺胞の最後の空気を絞り出します。このときの呼吸法が、逆腹式呼吸。時として、この時、丸い良い音がでることがあります。

 流速が早いと、リードが振動するより早く空気の流れが抜けていき、その振動が空気の流れに乗るから大きな音になる半面、微妙な振動(響き)がのらず、割れたような硬い音になりがちです。演奏法として表現の一部として多用されますが、長く聴いていると疲れます。それに対して、圧力差で流れを作っている場合は、わずかな流量でも十分の流れが生じ、また微振動を上手く乗せていけます。これにより「響き」が乗り、丸い音になるのだと思われます。
 私のような初心者が、スケールの練習をするとき、最初の「ド」よりも、オクターブ上に行ってから帰ってきた「ド」の方が、丸くて深い響いている音となるのは、この「息が足りない足りない」が故にできた、偶然の逆腹式呼吸法のおかげだと思っています。


 Fのドレミを吹いてみよう!


 まずは、オーボエと同じように、キイを低音から外していきましょう。

 ●F調基本の「ドレミファソラシド」

イングリッシュ運指F600

 F調(へ長調)の音階です。他の楽器では、ホルンが同じ音階です。ハ長調(C)より、3音半低い音階です。
イングリッシュホルンの「ド」の実音は、in Cでは、F(ファ)の音という事です。この関係は、B♭のテナーサックス、ソプラノサックスに対しての、Es のアルトサックス、バリトンサックスの関係と同じですね。
 とにかく、まずは、楽器の持つ「ドレミ」をスムーズに吹けるようにならないといけません。この場合、A=442Hzとして、チューナーをセットして、Low F、LowA、C、Fがあってくれば、その吹き方で良いと言うことにもなります。私の場合は、Low F、Low Aは、良いのですが、Fだと半音低いEがでてくることがあります。高き音階になると半音下がるというのは、実音が長くなっているので、若干短いボーカルに変えるか、ボーカルを目一杯奥に突っ込むか、ということになります。もっとも、まだ、アンブシュアや呼吸法が確定されていない場合は、もっとい気圧が高く、リードに不要な力がかからないように唇の形とリードの角度を調整するなどの調整が必要だと思います。


 B♭のドレミを吹いてみよう!


イングリッシュ運指Bb600-min

 さて、吹奏楽の標準の音階、ベー(B♭)を吹いてみましょう。みんなで合奏でのスケールとなると、このベーを吹くことが多いですね。さて、このB♭の「ドレミ」を、In Fの楽器のイングリッシュホルンで吹くと、運指は、このようになります。「ファソレシ♭ドレミファ」と吹けば良いですね。
 サックスだと、B♭の楽器で、Es音階を吹くと、この「ファソラシ♭ドレミファ」となります。似た関係ですね。ホルンでベーの楽器と合わせるときも、これが基本です。


 Cのドレミを吹いてみよう!

 さて、オーボエと合奏する事も多いでしょう。また一般の方と唄ったり伴奏したりするときは、C-dur が良いですね。「ソラシ♭ドレミファソ」と吹けば、ハ長調の「ドレミはソラシド」と聞こえているはずです。


 ドボ9の家路を吹いてみよう
 さて、イングリッシュホルンと言えば、この曲です。せめて、有名なフレーズぐらいは、吹けると良いですね。


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